2014年8月31日日曜日

ボウイで知ったブレルの名曲「アムステルダム」 ★ ジャック・ブレル:JACQUES BREL / Amsterdam (1964年)

 「アムステルダム」というジャック・ブレルの曲をデヴィッド・ボウイ経由で知った私は、“ボウイが好きなブレルって?”と我流の探求が始まったのです。私の10代の頃はネットもないので、所謂「シャンソン」の調べものをする時、先ずは身近にいる母に尋ねてみるのでした。ボウイに夢中になり始め、レコードが好きになってゆくなか、毎月のお小遣いとお弁当を週に一度はパン代に変えてもらい、その一部などを貯めては、“来月はどのレコードを買おうかなあ”と、夢いっぱいだったものです。

 フランソワーズ・アルディやブリジット・フォンテーヌが好きになってからは、ますます聴きたい音楽(レコード)の候補が増える一方でした。そんな頃、ブレルのレコードは、エディット・ピアフやイヴ・モンタンなどのシャンソン、淡谷のり子や渡辺はま子などの日本の古いレコードたちが、わが家のかなり年季の入った家具調のオーディオと一体化したような棚に並んでいました。今から思うとあの居間に佇むアンティークな風情を懐かしく回顧します。両親は特にコレクターでもなかったのですが、知ってるシャンソンに纏わるお話をしてくれました。正直なところ、ニュー・ウェイヴっ子の私には、何となく時代や世代のギャップのようなものを感じ、暫くそれらのレコードを自ら聴くことはありませんでした。


 ブレルのカバー曲を最初に知ったのはサンディ・ショウのベスト盤だったのですが、ボウイがブレルのカバーをしていると知った後は、次第に私自身もブレルのレコードを見つけては買うようになってゆきました。それも、家にあったブレルのレコードに「アムステルダム」は収録されていなかったので、ボウイがカバーした本家本元のブレルが歌う「アムステルダム」を聴くことができたのは数年後のことでした。そんな思春期の音楽との出会いからして時間軸の交錯するものだったこともあり、英国のアート・ロックやプログレ、インディペンデントのニュー・ウェイヴを聴きながら、フレンチ・ポップスやさらに古いシャンソンなどを並行して聴くリスナーとなったようです。それは学びでもあり今も続いています。

 ジャック・ブレルの「Amsterdam アムステルダム」は1964年の『OLYMPIA 64』に収録されていて、シングル盤で1973年にも発売されています。奇しくもボウイが「アムステルダム」をカバー曲としてシングルで発売した年と同じです。摩訶不思議なようですが、偶然とは必然でもあります。ブレルが好きですが、まだまだ私には存在が大きすぎてもっともっと聴き続けたいです。いつか「ブレルが大好きです」と云える日が来ると光栄に思います。そんなブレルの素晴らしい歌唱をライヴ映像と共に。こうした音楽の愉しみ方が今は手軽に出来ます。でも、探していた曲やアルバムと、何年か後にようやく出会えた時の胸躍る、あの気持ちは言葉を超えたものとしてずっと心に刻まれています。そんな音楽との出会いは、時には待つことも喜びになるのだと思えます。



2014年8月30日土曜日

今日のデヴィッド・ボウイ ★ DAVID BOWIE / Amsterdam - Jacques Brel Song (1973年)

 デヴィッド・ボウイが大好きだと語っていたリオちゃんでしたので今日はボウイ。ボウイとフレンチ繋がりというとジャック・ブレルです。ボウイはブレルのファンで1973年にはシングル曲「Sorrow」とのカップリングで「Amsterdam」をリリースしています。スコット・ウォーカーがブレルのカバーをしていたので、少年時代のボウイはたいそう影響を受けているようです。そして、ボウイがブレルのカバーをすることでマーク・アーモンドなどへとブレルの優れた歌が継承されてゆく美しき時の流れを想います。


初めて聴いたボウイのブレル・カバーはこの「アムステルダム」で、『BOWIE RARE』というアルバムがリリースされる事を知り、予約してどんなアルバムなんだろう~とわくわくしながら待っていたものでした。まだボウイのアルバムも数枚しか聴いたことがなかった10代の頃のこと。年月を経ても、あの時、あの頃の風景が蘇るのです。ボウイや愛しき音楽たちは私の人生の大切な時の時です。



2014年8月29日金曜日

今日のフレンチポップス ★ リオ:LIO / J'obtiens Toujours Tout Ce Que Je Veux (1980年)

 リオ(LIO)が1980年にリリースした1stアルバム『LIO(美少女リオ)』に収録の「J'obtiens Toujours Tout Ce Que Je Veux(邦題:みんな欲しいの)」という曲。この頃のリオちゃんは17歳頃でしょうか、白いドレスに髪にはおリボン。ぴょんぴょん飛び跳ねて、兎にも角にもかわいいです。私の場合、女の子に滅法甘いので色んなかわいらしさを愛でる訳ですが、リオちゃんの場合はやはりパンク・ロリータです。ちょっと危うくて刺戟的。でも晴朗たるポップ・アイコンから逸れることはない。フレンチ・ポップ界に於いて異端なアイドル、ナンバー・ワン!
 
 リオはポルトガル生まれのベルギー育ち。70年代末にフランスより先にベルギーでデビューしていて、今やベテランの域に突入しているお方で女優としても活躍されています。フレンチ・ポップスのアイドルというと、シルヴィー・ヴァルタン、ジョニー・アリデイ、フランス・ギャル、フランソワーズ・アルディ、ジャック・デュトロン、シェイラ、ジェーン・バーキン...と、みんな60代後半~70歳を超えた大ベテランという世代で、日本では団塊世代とか全共闘世代などと呼ばれる世代です。ポスト団塊よりさらに後の世代のリオやエティエンヌ・ダオー、エリ・メデイロスやジャクノ(エリ&ジャクノ)、レ・リタ・ミツコ、ジャンヌ・マス、ミレーヌ・ファルメール、パトリシア・カース、ヴァネッサ・パラディ、シャルロット・ゲンズブール...といった80年代に登場したフレンチポップスのアーティスト達には、どうしても同時代性としての理屈を超えたシンパシーのようなものが、また、先輩世代に対する憧憬のようなものもずっとあります。映画やファッションなどは60年代後半から70年代前半の雰囲気がとても好きなので、80年代音楽は私にとって特別な気がします。なので、いつまでも“リオちゃん”であり続けるようです。